LOVELY☆ドロップ
――すまない、祈。
こんな未熟なぼくで……本当に……。
心の中で深く詫びながら、ぼくは静かに口をひらいた。
「うん、ごめんね祈。だけどね、ママは無理なんだ」
こればっかりはぼくでも用意できないものなんだ。
いったいこれからどれくらいの間、こんなやり取りが続くのだろうか。
ぼくは祈に気づかれないよう、そっと息を吐いた。
だが、そのため息は祈に聞こえていたらしい。
しまったと思った時にはすでに遅い。
癪(シャク)にさわった彼女は童話なんかに出てくる赤鬼のごとく顔を真っ赤にして怒りの形相を向ける。
「パパのわからずや!! とんちんかん!!」
祈は怒鳴ると、自動ドアへと走り、開いたそのスキに今もなお降り続けている土砂降りの雨の中を走って行った。
「祈!!」
ぼくは食料がたくさん入ったビニールの手提げ袋を持つのも忘れて怒りに満ちた小さな背中をすぐに追いかけた。