LOVELY☆ドロップ
ぼくがそう思ったのは、デパートから家までの距離は徒歩15分と、さほど遠くもないからだ。
道順もいたって簡単で、緩やかにカーブしている車一台が通れるくらいの一方通行に沿った先には大きい交差点があり、そこをまっすぐ進めば、ほどなくしてぼくと祈が住むベージュ色をした6階建てマンションが見えてくる。
この豪雨の中だ。
いくら祈が怒っていたとしても、すぐ家に帰りたいと思うだろう。
それなのに祈を見つけ出すことができないなんて!!
いったいなんだってあの子はぼくよりもずっと短い足でこんなに速く走ることができるんだろうか。
ぼくは彼女の身の安全を心配しながら、走り去ってしまったわが子を探した。
そうして視界が悪い中、カーブし終えたその道の先で視界が広がる。
大きい交差点に入ったところにある信号機のそこ――。
ちょうど真下で桃色のワンピースが見えた。
――いた。
祈だ!!
彼女を視界に捉えると、踏み込むたびにグチョグチョと水音を奏でるぼくの足はさらに加速した。
近づいてみると、祈の他にもうひとりいることがわかった。
祈はいったい誰といるのだろうか。
ぼくは走る足を止め、様子をうかがいながら、祈がいるそこへとゆっくり歩いていく。
すると、祈の隣で細い足を折りたたみ、自分の体を守るようにして屈んでいる人物が見えた。
その人物は肩幅が狭く、なで肩で、胸のあたりまである髪もこの豪雨でびっしょりと濡れている。
どうやら祈と一緒にいる人物は女性らしい。