LOVELY☆ドロップ
祈は膝を屈め、うずくまっている女性に何かを話しかけているようだ。
――いったいどうしたのだろうか。
「祈!!」
ぼくはそう疑問に思いながら、大雨にかき消されない声を出して大切なわが子の名前を呼んだ。
「パパ!!」
ぼくの声が聞こえたのだろう。
祈は振り返り、駆け寄ってくれた。
それは当初、真っ赤な顔をしてぼくの元から去って行った、怒りの形相はすっかり消えている。
その代わり、彼女は眉をハの字にして眉間に皺(シワ)を寄せ、ずぶ濡れになっているぼくのシャツを掴んでいた。
「祈!! だめじゃないか。走って外に出ちゃ!!」
ぼくがどれだけ怒っているのかを祈に伝えるため、しゃがんで同じ目線にする。
万が一、祈が交通事故に遭ったとしたら……?
沙良(サラ)のようにこの世からいなくなったら……?
そう思うと胸が引き裂かれるように痛み出す。
だが、今の祈はぼくのお小言を聞くどころじゃなかった。
ぼくの娘は掴んだシャツを離さずに、上げたり下げたりを繰り返している。
「パパ!! パパたいへん!! おねいちゃんが!! はやく!!」
やがていくらかシャツを引っ張り終えた小さな手はぼくの手をしっかり掴み、先ほど話しかけていた女性のところへとぼくを導く。
女性は小さな肩を両腕で抱きしめるようにしてうずくまっていた。
なんだか泣いているようだ。