LOVELY☆ドロップ
このままここにいても、この感情は理解できないだろう。
それに、うずくまっている彼女の様子がどうもおかしい。
普通、見ず知らずの異性に突然触れられたら驚くだろうに、彼女にはその素振りがない。
それよりも、さっきよりぐったりとしているように見えるのはぼくの気のせいだろうか。
「きみ、大丈夫? どうしたの?」
不安に思ったぼくは、そこでようやくうずくまっている彼女に声をかけた。
だけど、ぼくの声は彼女には届かないらしい。
顔はそのまま俯き、ただしきりに地面へと降り注ぐ大粒の雨に打たれる様子を見つめていた。
こんなに近くにいて、ぼくが声をかけているのに一向に反応が返ってこないのはおかしい。
「きみ!!」
嫌な予感がしたぼくはもう一度彼女に声をかけ、か細い肩を揺らす。
すると、彼女の体は抵抗もしないまま、するりとぼくの胸の中に入ってきた。
――それはあまりにも突然で、自然だった。
おかげで彼女がぼくの腕の中にいるのが当たり前のような気がしたんだ。
ぼくは彼女の頬に触れ、顔色を確かめようと上を向かせる。
……顔は、とても可愛らしかった。
年齢は24、5歳あたりだろうか。大学生の顔とは違う、どこか垢抜けた感じがしたからそう思った。
今は閉じているけれど、きっと目はどんぐりくらいの大きさだろう。
小さな鼻の下にあるふっくらとした唇は雨に打たれているせいか、少し紫色に変色している。
だがそれも、あたたまればきっと鮮やかな紅色になるだろう。