LOVELY☆ドロップ
もう二度と女性をそういう目で見ることはないと、そう思っていた。
この先、ぼくは年老いてこの世の生を全(マット)うするまでずっと『聖職者』になるんだと、そういう心持ちでいたというのに……。
「…………」
ぼくは彼女を着替えさせることはできない。
だが、彼女には着替えが必要だ。
そしてここに女性はいない。
ならば、いったいどうする?
せめて……。
せめて沙良がまだ生きてくれていれば、こんな余計なことも考えなくてもよかったんだが……。
――いや、そもそも沙良がいれば彼女をそういう目で見ることもなかったはずだ。
それにしても……と、ぼくはもう一度、壁にもたれてぐったりしている華奢な体つきの彼女を見る。
胸辺りまである波打つ茶色い髪は地毛だろうか。
少しも傷んでいないように思う。
前髪がたまご型のふっくらとした輪郭をなぞるように流れ、弧を描く整った眉に届いている。
今は閉じている大きな目を覆う瞼の先についている長いまつ毛と小さな鼻。
――そして唇。
熱さえなければきっと、彼女はとても可愛らしいんだろうな……。
「パパ!!」
どうやらぼくは、またしても彼女に目を奪われていたらしい。
祈がぼくを呼ぶ声で我に返った。
「はやくおんなのひとをきがえさせなきゃ!! それにパパも!!」
いつの間にやらバスタオルを捨て去り、ぼくが用意した服に着替えた祈はぼくの腕にかけてあった沙良のワンピースを奪っていた。