LOVELY☆ドロップ
取っ手を持ち、扉を押し開ける。
そこは6畳の畳部屋になっていて、ぼくと祈の寝室だ。
ぼくの腰までくらいの高さがある木製の箪笥(タンス)と作業用机しかない殺風景なこの部屋。
だが、この部屋にある麩(フスマ)を開けば隣は祈の子供部屋で、猫やたぬきのぬいぐるみやらがおもちゃボックスに収納されている賑やかな部屋がある。
寝る時以外はほとんど祈の部屋と寝室は解放しているので、その殺風景さは気にならない。
「祈、ほんとうに大丈夫かい? ちゃんと着替えさせることできる?」
押入れから敷布団とうわ掛け布団一式を取り出し、畳の上に敷いた後、ぼくはいったい何度目になるだろうその言葉を口にしている。
「だいしょうぶ! あたしはりっぱなレディーよ。さあ、パパはおそとにいてて!! はやくふく、きがえてね。
ぬれたままだと、かぜ、ひいちゃうでしょ?」
――いったい、『立派なレディー』などという言葉はどこで覚えたのだろう。
そう思っていると、小さな手がぼくの背中を押した。
「ぜったい、はいってこないでよね!!」
祈はいっちょまえに言うと、部屋のドアを閉めた。
ぼくは、といえば……自分の部屋でもあるというのに追い出しをくらったようで、なんだか虚しさを味わっていた。
気分は……そう、夜遅くまで飲み会があってそれを妻に電話しなかったために閉め出しをくらった情けない夫の心境だ。