LOVELY☆ドロップ
「……ん」
しばらく女の子を見つめていると、あたしの視線を感じたのか、身じろぎをした。
かと思えば、彼女のふっくらとした小さな唇がほころぶ。
その表情があまりにも穏やかで、可愛くて、安心しきって眠っている女の子の姿を見たあたしも伝染する。
気がつけば、あたしの口元に笑みがこぼれていた。
だけどほんとうにこの子、どこかで見た気がするんだけどな……。
いったいどこで見たんだろう?
あたしが勤めている会社は貿易を目的とした会社で、子供とは無縁のはずだ。
しかも、あたしはOLといった俗にいう一般事務員だ。
だからほとんど社内にしかいない。
あたしがすることといえば必要な書類をコピーしたり上司や社員にお茶を入れたりといった雑用だ。
当然、子供と会う機会もなければ接触もない。
ということは、あたしが住んでいる社宅付近に住む子だろうか。
だけど今まで社宅周辺で子供の声を聞いたことがあっただろうか。
どちらかというと、周りの住宅に住む人たちの年齢層は年配が多かったような気がする。
だったら、いったいどこでこの子を見かけたのだろう?
自分の置かれた状況も忘れ、ただひたすらそのことばかりを考えていると、眠っている女の子の足元側にある木目調の扉が静かに開いた。
――誰?
ふたたび恐怖を感じたあたしは身を守るため、けっして頑丈な防具とは言えない柔らかな上掛け布団を胸の前までたぐり寄せた。