LOVELY☆ドロップ

だけどその恐怖も開いた隙間から漏れる明るい光と共に入ってきた人物を目にすると一瞬で消え去ってしまった。

その人物は思わず見惚(ミト)れてしまうほど、とてもカッコこいい男の人だった。


身長は、180センチ以上はあるんじゃないかな。


立ち姿がスマートで、足がすらっとしている。


襟足までの黒髪に、顔は、すっと通った鼻筋。

目は少し大きめで、唇は弧を描いている。

年齢は30歳前後だろうか、見た目は若そうなのに、どこか心の余裕を感じさせるからそう思った。

とても優しそうな人だ。


その男の人は横になっているあたしに歩み寄り、「ちょっとごめんね」と、そう言ってあたしのおでこに手を当てた。


そうかと思えば、彼は何かを少し考えてから、あたしのおでこへと伸ばした手を引っ込めた。


「うん、熱は引いたね。急に冷たい雨に当たったから熱が出たのかな? 下がってよかった」

彼は大きめの目を細め、にっこり微笑んだ。

弧を描いている唇から静かに告げた声は小さいのに澄んでいて、とても聞き取りやすい。

この男の人はどちらかというと癒し系っていう感じかな?

傍にいるだけでなんだかほっとする。


そこで気になったのは、男の人が言った単語だ。

『熱』とはいったいどういうことだろうか?


あたしは自慢じゃないけれど体は丈夫な方で、滅多に風邪はひかない。


それなのに、この男の人はまるであたしが大病を患(ワズラ)っていたかのような口ぶりで話していた。


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