LOVELY☆ドロップ

……なんだろう。

とっても大切なことを忘れているような気がする。


なんだったっけ?

えっと……。



『そのこと』はあたしにとってとても大切な内容で、どうしても思い出さなければいけないことのような気がした。

だからあたしは今朝の出来事を順に沿って思い出してみることにした。



あたしは――――そう。


たしか、あたしは今日、付き合っていた慶介(ケイスケ)に話したいことがあってレストランで待ち合わせしたのよね。

普段、あたしからデートに誘わないけれど、どうしても話したいことがあって勇気を出して慶介を誘ったの。


話したいことっていうのは……。

なんだっけ?


あたしは隣で静かな寝息を立てている天使のような女の子をチラリと見た。


――子供。


そうだ。

あたしのお腹の中に赤ちゃんがいるっていうことを慶介に話そうと思って待ち合わせしたんだ。


あたしに子供ができたことを告げたら、慶介はきっと手放しで喜んでくれると思った。


そうしてあたしに優しくしてくれたように、これから生まれてくる赤ちゃんも大切に育ててくれるって思ったんだ。


それなのに――。


ああ、そうだ。彼はそうじゃなかった。

慶介は赤ちゃんを望んでいなかった。

それどころか、彼には奥さんと子供さんもいて、あたしとじゃない家庭があったなんて!!


慶介にとってはただの火遊び。

暇つぶし。


だけど、あたしは違った。


あたしだけが慶介に本気になっていたんだ。


< 47 / 266 >

この作品をシェア

pagetop