LOVELY☆ドロップ
あたしは数時間前にあった悲しい現実を思い出し、手にしていた掛け布団をより強く握りしめた。
そうしたのは、何かに掴まっていないと体ごと先が見えない底なし沼に落ちていきそうで怖かったからだ。
「大丈夫? やっぱりまだしんどい? 熱が下がったとはいえ、まだ本調子じゃないもんね」
かけられた声にはっとして気がつけば、男の人の顔があたしの目の前にあった。
眉は垂れ下がり、目がとても悲しそうだ。
心配そうにあたしの顔色をうかがってくれる。
そこでまた、あたしは今日起こった出来事を新たに思い出した。
それは慶介と別れた後のこと――。
何もかもを信じることができず、雨の中でうずくまっていた。
それは雨に打たれたせいか、それとも慶介に捨てられて精神的に追いやられたせいか。
あるいはその両方かもしれない。
急に体がずっしりと重くなって、どうしようもない息苦しさを感じたその時、隣で眠っている天使のような女の子があたしを見つけてくれた。
……そっか、それでだ。
だからこの女の子とどこかで会ったような気がしたのね。
そして、この男の人はこの子の父親だ。
彼はたぶん、気を失ったあたしをここでまで運んでくれて、看病してくれたのね。
ということは、ここは女の子と彼の家だろう。
なにせ、ここはとても家庭的な部屋で、どう見たって無機質な病院には見えないもの。