LOVELY☆ドロップ
この部屋はまさに彼女のためにあるのだという妙な考えがぼくの頭に過ぎった。
――そんなことはあり得ない。
なんたって彼女はぼくと初対面だ。
当然、この家に来たのもはじめてで、だからこの考えはとてもおかしい。
そんなありもしない事が頭に過ぎったのはきっと我が子、祈の存在だろう。
なにしろ祈は女性に寄り添い、心地よさそうにすやすやと寝息を立てて眠っている。
いつまでも沈黙したまま見つめていては失礼だろう。ぼくはふたたび視線を祈から女性へと移動させた。
「熱は引いたね、下がってよかった」
などと頭の中に浮かんだ適当な単語を拾いあげ、そう言った。
ぼくの声がみっともなく震えているのは彼女が可愛すぎるせいだ。
――彼女の姿はそう、まさにぼくが思い描く理想のタイプそのものだった。
まったく、ぼくはいったいどうしたというのだろうか。
思春期真っ盛りな子供じゃあるまいし。
コミュニケーションのやり取りさえも忘れてしまうなんて!!
自分に突っ込みを入れながら、それでも彼女が可愛すぎるのだから仕方ないと、そう言うもうひとりの自分がいる。
彼女の澄んだ大きな目が真っ直ぐぼくを映している。
それだけで、心臓が大きく跳ねる。
鼓動する心臓を無視して女性と視線を重ねる。
彼女の様子をうかがった。
女性の大きな目は熱が下がったにもかかわらず、どこか悲しげだ。