LOVELY☆ドロップ

そしてその言葉を告げた後にどうしようもない失望感がやって来る。

それは毎度のことだった。


「妻は生まれつき体が弱くてね、この子が生まれると同時に亡くなったんだ」


やがてやって来る失望感から自分を守るため、苦しいのは自分だけではないと言い聞かせ、傍らで眠っている祈の頭を撫でる。


妻と呼ぶ彼女はもういない。

それを言う事はぼくにとって大きなダメージをあたえる……はずだった。



……だが、なぜだろう。

いつまで待っても失望感はやって来なかった。

少なくとも、今現在は悲しいという感情が湧き出てこなかったんだ。

それはとても不思議だった。

ぼくは彼女の――他人の前で、妻がこの世からいなくなったことをすんなり受け止めることができたんだ。

しかも、ぼくは今、笑っている。



ぼくの脳裏には、沙良を失った時の記憶ではなく、共に過ごした楽しい日々しか蘇(ヨミガエ)ってこなかった。



ぼくはこれまで、沙良がこの世からいなくなってから5年という年月を、ただ忙しさで誤魔化し、どうしようもない失望感から逃げてきた。

それがなぜ、今は平気な顔をして笑っていられるのだろうか。

疑問が生まれたものの、だがそれもすぐに解けた。



……彼女と話していると、どこか心が安らぐんだ。


彼女は不思議な女性だ。

今まであれほど心にぽっかりと穴があいたような気持ちでいたのに、それがないなんて……。


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