LOVELY☆ドロップ

「…………そうだったんですか」


戸惑っているぼくを前にして、彼女は大きな目を伏せ、俯(ウツム)いた。


ぼくの目の前から茶色い瞳が色を無くし、虚ろになる。


立ち入ったことを聞いてしまったと思っているのだろうか。

たしかに、いつもなら他人に深入りされたくはないと――よけいな詮索はせず、放っておいてほしいと思っていた。



だが、今は違う。


沙良のことを思い出しても胸は張り裂けそうに痛んだりもしないし、虚無感もない。

だから悲しそうにしないでほしい。


――彼女の笑顔を見たい。

ぼくが彼女を笑わせてあげたい。

また……そういった感情がぼくの中に流れ込んできた。



本当にぼくはどうしてしまったんだろう。


戸惑っていると、ぼくと彼女の間にしばらくの沈黙が生まれてしまった。


長い沈黙が生まれたことを悔やむぼくは、彼女の笑顔が見たいと純粋にそう思い、口を開けた。

その瞬間だった。


ぼくの右頬が突然鋭い痛みを訴え、同時に乾いた大きな音がここ――寝室に響いた。

突然のことで自身の身に何が起こったのかわからない。

しばらく放心したまま口をあんぐり開けたままでいると、右頬がジンジンと痛み出した。


そこで気がついたことは、ぼくは彼女に平手打ちをお見舞いされたということだった。


「なにをするんだ!!」


まさか叩かれるなんて、いったい誰が想像し得ただろうか。


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