LOVELY☆ドロップ
何がどうなって、いったいそんな行動にでられたのかわからない。
彼女を見ると、彼女は両肩を上下させ、大きな目をつり上げてものすごい形相でぼくを睨(ニラ)んでいた。
怒りたいのは突然叩かれたぼくの方だ。
なぜ会って間もない、しかも熱がある彼女を看病までしたぼくが殴られなければならないんだ?
「さいってーーー!! チカン!!」
彼女は侮蔑的(ブジョクテキ)な眼差しでぼくと対峙している。
それに彼女は何と言った?
痴漢……?
ちょっと待て、それはかなり侵害だ。
なにせぼくはこれまで沙良以外の女性に関心を抱くことはなかった。
だから彼女を亡くした今まで、ぼくは神に仕える聖職者そのものだったはずだ。
何が痴漢なのか、ぼくにはさっぱり心当たりがない――ともいえないかもしれない……。
彼女の言葉を否定したいのも山々だったが、自分の感情で思い当たる節がいくらかあった。
なにしろ、彼女のふっくらとした紅色の唇を奪いたいなどと思ったそれはまぎれもなく事実だったからだ。
――いや、いやいやいやいや。
思っていただけで、別に行動に移してはいないんだから、それをどうこう言われる筋合いはないだろう。
ぼくは、はたと思い直し、これまでにないくらい大きく頭を振った後、怒り狂う彼女に負けじと大声で怒鳴った。
――傍で祈が眠っているのにもかかわらず……。
それも大人気なく大声で。