LOVELY☆ドロップ
もう、いいんだよ。
side:Jun Kusakabe
「おねいちゃん、ねちゃったね」
名前も知らない彼女は泣き疲れたのだろう。ぼくの胸にもたれかかり、眠ってしまった。
祈(イノリ)は、静かな寝息をたてて眠っている彼女を起こさないよう気遣い、小さな声でそう言った。
「そうだね」
ぼくも小さな声で祈に返事をすると、自分の腕の中にいる彼女をあらためて見下ろした。
熱が下がったおかげで顔にはずいぶん赤みが戻っているものの、それでもまだ顔色は悪い。
赤く腫(ハ)れぼったい瞼(マブタ)はさっきまで泣いていたからだ。
ややつり上がり気味の目尻から頬に向けて涙が何筋も伝っていた。
『ごめんなさい』
『ごめんなさい』
そう言って何度も謝る彼女は、いったいどんな悲しみを背負っているのだろうか。
そんな彼女が今、ぼくの腕の中で眠っていることがごく自然に思えるから不思議だ。
こんなおかしな感覚はぼくにとってはじめてで、正直どうしたらいいのかわからない。
彼女とぼくは何の接点も持たない赤の他人のはずなのに、なぜか血の繋がりよりも濃い何かを感じる。
……ほんとうに。
「ぼくはどうしたらいいんだ」
「パパ……。おねいちゃんをねかせなきゃ!!」
戸惑いにも似た感情を抱いていると、祈が、『ぼくがどうすればいいのか』を教えてくれた。
さすがは祈。
とてもいいアドバイスだ。