LOVELY☆ドロップ

すると彼女は顔を上げ、眉根を下げて、申しわけなさそうに微笑んでいる。


そんなふうに笑ってほしいんじゃないんだけどな……。


ぼくは自分の気持ちをどう言っていいのかわからず、ただただ彼女を見つめていた。



「パパ、おなかすいた~」


しばらく沈黙が流れていると、それを破ったのは紛れもない彼女――どんな雰囲気だろうとおかまいなしな我が家の姫君、祈だ。


祈はお腹をさすって腹が減ったと抗議をしてきた。


そこで思い出したのは、祈のスパゲットはこれまでにないほどの大惨事(ダイサンジ)になっているということだ。


「パパ、スパゲット!!」


早くご飯を出してくれとせっつく祈に渋々腰を上げ、台所に移動すると4人掛け用テーブルに置いた。

足取りが重いぼくの後に続き、椅子に座った祈ははじめはとても嬉しそうにしていたが、パスタを口に運んだ瞬間、その笑顔はすぐに変化した。

「これ、むにゃってする……イノのスパゲットじゃない……」


祈は今にも泣きそうな顔をしてぽつりとつぶやいた。

やはり彼女もいつものパスタよりも柔らかすぎることに気がついたらしい。フォークに巻きつけている茹ですぎたパスタを怪訝(ケゲン)そうに見つめていた。


いたたまれなくなったぼくは、とうとう頭を垂らし、祈と同じ視線になると頭の上で両手をパチンと合わせた。


「祈……ごめん、スパゲット……失敗したんだ……」


「しっぱい……イノのスパゲット」


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