LOVELY☆ドロップ
それを見た彼女は大きな目を細め、口元には笑みを浮かべている。
――そう、それこそがぼくが見たかった笑顔だ。
「…………」
祈は彼女から視線をそらし、何かを考えているようだ。伸びきったパスタを一心に見つめている。
いつまでも食べる姿を見られては居心地が悪い。
祈の心情を察したぼくは食器を片付けようとフローリングから腰を上げた。
すると突然、ぼくのシャツが後ろに引かれた。
何事かと思い、振り返れば、小さな手がシャツの裾を掴んでいた。
「パパ……ごめんなさい。ごはん、つくってくれて……ありがと……」
そう言った祈の視線はやはりぼくではなくスパゲッティーにある。
一度は否定してしまったんだ。なかなか面と向かって素直に謝ることができないんだろう。
それでも謝ったのは、心から悪かったと思っているのだと、そう思った。
ぼくはそんな祈を誇らしく思った。
「いいんだ、パパこそごめんな」
ぼくが謝ると、祈はフルフルと頭を振り、大きな目に涙を浮かべてポロポロと大粒の涙を流しはじめた。
「ごめっ、なさい。『いらない』っていって、ごめんなさいっ!!」
祈はそう言って短い両手を伸ばしてくる。
その祈がとてもいじらしくて可愛くて……だからポンポンと頭を撫(ナ)でてやりながら、ぼくは大粒の涙を流す小さな体を抱きしめた。
そのぼくの隣では、彼女が微笑んでいる。