LOVELY☆ドロップ
黙々とスパゲッティーを口に運ぶ祈の姿にほっと胸を撫で下ろしたぼくは、美樹ちゃんのお粥(カユ)づくりに取りかかることにした。
世話になったのにそこまではいいと彼女は遠慮(エンリョ)したが、それでは駄々をこねる祈を和らげてくれたぼくの気が治まらない。
それに祈の方も彼女がぼくの家で夕飯を食べないということを許さなかった。
美樹ちゃんはとうとう根負けし、そうして3人で夕食を共にした。
「ねぇ、おねいちゃん。イノのお部屋に来て!!」
いつもなら窓の外はまだ明るいものの、今日は昼から生憎の雨だ。今は深夜であるかのようにとても暗い。
――時刻は夜7時。
食事を終えた祈は美樹ちゃんの手を引いて子供部屋へと向かった。
その姿を、食器を洗いながら横目でちらりと確認する。
それにしても、とぼくは思う。
こんなに楽しそうに話している姿を見るのは久しぶりだ。
どんなにマセたことを言っても祈はまだ子供。
普段、甘えてこないのをいいことに、ぼくは仕事ばかりに専念し、祈と同じ世界を見ていなかったんだと今日はさんざん思い知らされた。
仕事は食べていくのに大切なことだし、とても好きな趣味の分野でもある。
だが、今後はもっと祈のことも気にかけよう……。
そのためにはもう少し、ゆとりを持つべきかもしれない。
それとも、ベビーシッターでも雇(ヤト)おうか……。
そんなぼくの脳裏には、なぜかエプロンを身につけた美樹ちゃんが浮かんでいた。