LOVELY☆ドロップ
だけどこの腕はやがて消えていくことは知っている。
潤さんと祈ちゃんとのお別れはすぐ目の前にある。
だからあたしは差し伸べられたこの手を振りほどかなきゃいけない。今すぐに!!
……それなのに、あたしはそれを拒んでしまう。
これから赤ちゃんとふたりきりで生きていかなきゃいけないのに、この腕を離したくないと思う自分がいる。
『離れなきゃ』
自分に言い聞かせても、全然いうことを聞いてくれない自分が恨めしい。
それどころか、心臓がつぶれそうに痛みだす。
だけどこれからはひとりきりで過ごさなきゃいけない。
それでも彼に甘えるのは今だけだと、潤さんから目をそらし、自分を偽る。
「今日はここに泊まればいい」
潤さんは耳元でそう言うと、あたしを敷布団の上に下ろして布団をかけてくれた。
あたしはもちろんその嬉しい申し出を断らなきゃいけない。
今から社宅に戻り、荷物の整理をして新しく住む家を探さなくてはならない。
それなのに、あたしは何をするでもなく、ただ頑(カタク)なに唇を引き結ぶ。
頼っちゃいけない。
差し伸べられたこの手が無くなるのは目に見えている。
だから、ひとりで生きていかなければならない。
それなのに……。
あたしは何も言えずに黙ってしまう。
沈黙したまま、あたしの体に被せられた布団を見つめていると、突然お腹のあたりの布団がゴソゴソと動いた。