晴天の教訓

二人の間に少しの沈黙が流れていると、ツアー客に乗船を促すアナウンスが流れた。

私は助かったと急いで足元に置いておいた自分の荷物を担いだ。

「先橋さん、それ持つよ」

彼は私の荷物を指差してそう言った。

「いいよ~このくらい、何でもないし」

私がそう答えて歩き出そうとした瞬間グイッと後ろに引かれた。

『いいから、持たせろよ』

とても低い男の声が耳元でそう告げた。

背筋がビリビリと震える感じがした。

聞き慣れない低い男の声は私に恐怖を感じた。

瞬間的に体が動かなかった…

もう一度肩に引っ掛けた荷物を引っ張られて私の体は再び動き出した。

「じっじゃあ、お願い、しようかな…男性は力持ちだもんね。あっでもね私もそれなりに重たい荷物とか平気だよ。いつも買い物とか行ってるし」

声が上擦らないよう、努力したつもりだった…

しかし実際は随分と声は震えていた。

それでも彼は気にする様子はなかった。

そして私の荷物を取り上げると紳士的な笑顔をしていた。

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