短編集~The Lovers WITHOUT Love Words~
「・・・援助?誰が援助したと言った」
追い討ちをかけるように、恵一が口を開く。
シャツの胸ポケットから、紙を取り出した。
「お前の新居を整えるのにかかった経費だ。働くようになってから、少しずつ返せ」
「・・・はい」
雪音はその紙を受け取ると、再び頭を下げた。
「『赤の他人』の私なんかに、こんなにお貸しくだすってありがとうございます」
「・・・お前、赤の他人と言われたことを怒ってるのか?」
「いえ、事実ですから」
怒ってません、ただ悲しいだけです。
恵一は、床を見つめる雪音を何も言わずに見ていたが、やがて口を開いた。
「お前が何と思っていようと、俺は妹だとは思わない。俺にとって雪音は赤の他人だ」