短編集~The Lovers WITHOUT Love Words~

ドキン、と胸の鼓動が聞こえたような気がした。

雪音を見つめる恵一の顔が、いつもと違う顔に見える。
雪音の知っている恵一にぃとは、違う顔だった。

「・・・」

次の言葉が出てこない雪音に、恵一は幾分表情を和らげて視線を逸らす。

「まぁ、いい」

次に雪音を見たときは、いつもの恵一にぃの顔に戻っていた。

「お前はまず、もっと世界を見てきたほうがいい。色んなモノを見て、色んな人と話をしろ。その後で、無数の選択肢から自分の意思で俺を選ぶのなら、そのときは―――」

恵一はドアを開けた。

「歓迎するよ、その紙ごと」


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