短編集~The Lovers WITHOUT Love Words~
随分、唐突な質問だ。
急に真顔で恵一に尋ねられ、雪音は答えにつまった。
意図していないのだろうけれど、恵一のまっすぐな視線は時に痛いほど鋭くて、こちらの心の中まで見透かされているような気になってしまう。
「そ、それは…」
少し考えた後雪音は、嘘にならない答え方を思い付いた。
「ここにいたかったの」
嘘ではない。むしろ、これが本音だ。
しかし、理論家の恵一はその答えに納得しなかった。
雪音をじっと見据えたまま、恵一は静かに反論した。
「俺たちは、飽きるほどここにいたはずだ」