短編集~The Lovers WITHOUT Love Words~
ふいに風が止まり、何も聞こえなくなる。
今のは、今のは
何かの聞き間違え?
恵一の真意を測り損ねて、雪音は次の言葉が出てこない。
「…それは…、」
雪音が何か言おうとしたとき、誰かの声が聞こえた。
「誰かしら、箒をこんな所に置いたままで」
雪音が思わず立ち上がる。
「院長先生だ!」
また怒られる!
慌てる雪音に、恵一も笑いながら立ち上がる。
「じゃあ、またな」
軽く手を上げると、そのまま下りていった。