短編集~The Lovers WITHOUT Love Words~
「今でも、君が好きだ」
あまりにも唐突に言われたので、思わず笑ってしまった。
「どうしたの、急に」
「別れたことを、後悔してる」
かつての恋人はそう言うと、私をじっと見つめた。
私は彼に背を向けて、歩く。
顔を見られたら、本心を悟られそうだから。
「そう。でも、もう手遅れよね」
素っ気無い調子で言うのに、少し苦労した。
こういう気持ちを、まんざらでもない、というのだなとちょっと納得。
「わたし、もう結婚してるの。ご存知でしょうけど」
「そうだね。でも、君はあいつで、本当に満足なのか。僕の方が君を、愛してると思う」
痛いところをつかれて、少しむきになった。
「余計なお世話」
通りがかったタクシーに手を上げた。