短編集~The Lovers WITHOUT Love Words~
簡単な夕食の支度が済んだころ、夫が帰ってきた。
「ただいま」
「おかえり」
わたしは忙しいふりをして、彼に顔を向けずに鍋をかき回す。
顔を見られたら、何か悟られてしまいそうで。
「これ」
彼はコートのままキッチンに来て、わたしに一輪のガーベラを差し出した。
飾り気のない透明のビニールにくるまれていて、駅前の花屋のシールが貼ってあった。
「どしたの?」
一瞬口ごもった後、夫はこう言った。