短編集~The Lovers WITHOUT Love Words~
「しゃかき!」
フリルのついたワンピースの裾を翻すと、少女は自分の呼びかけた男に向かって駆け出した。
少女、というよりは幼女といったほうがいいかもしれない。
芝生の凹凸に、まだおぼつかない足を取られて見事に転んだ。
「スミレお嬢様!?」
しゃかきと呼ばれた男が、驚いて走り寄る。
少女を抱き起こすと、腰を落として少女の顔を伺った。
「大丈夫でいらっしゃいますか、お嬢様・・・」
「しゃかき」
しゃかきの言葉を、スミレが遮る。
「おじょうしゃまじゃなくて、おひめしゃまでしょ!」
ふくれっ面をするスミレに、しゃかきの顔が思わずほころんだ。
地面が柔らかかったので、お嬢様は大丈夫だったご様子だ。
「そうでした。申し訳ありません、お姫様」