短編集~The Lovers WITHOUT Love Words~
榊は腰をかがめてスミレの目の高さに自分のそれを合わせると、
「お姫様、シンデレラもお母様がいらっしゃらないのですよ?」
と話しかけた。
意外な言葉に、スミレがつい泣くのをやめる。
「・・・そうなの?」
榊が大きくうなずいた。
「えぇ。でもシンデレラは、泣いたりしませんでしたよ?」
榊は、泣き過ぎて荒れてしまったスミレの頬を優しくなでた。
「スミレお姫様も、強く気高くなられませんと。舞踏会に行けなくなってしまいますよ?」
「・・・行く、ぶどーかい」
「それでは、かぼちゃの馬車を呼びましょう」