短編集~The Lovers WITHOUT Love Words~
二人は黙ったまま、しばらく互いを見つめていた。
互いの真意を諮るのに、それで十分だった。
やがて、スミレが口を開いた。
「あなたも一緒に?」
「勿論です。ランプの使いは約束を守る男ですから」
スミレが吹っ切れたような笑顔になり、うなずいた。
「ただし、お嬢様。一つ注意点がございます」
榊が人差し指を立てる。
「ネバーランドには、ふかふかのお布団やお屋敷はございません。ご馳走もありません。寝床はハンモック、住まいは木のウロ、食べ物はドングリのパンですが、それでもよろしいですか?」
スミレが笑った。
「大丈夫よ、私もあなたと同じ魔法が使えるから。この灰色の屋敷を、光あふれるお城に変えることのできる魔法を、ね?」