短編集~The Lovers WITHOUT Love Words~

大地の家を出ると、遠く眼下に海が見えた。
何事もなかったかのように、青く静かに横たわる海を見ると、また悲しみが蘇る。
答えの出ない「どうして」の問いとともに。

答えを海に問いただす代わりに、繭は空を見上げた。
雲ひとつない、青い空。

分かってる、見上げてももう大地はいない。
信じて歩んできた道標は、あの日突然消えてしまった。
大地の後を追うことは、もうできない。

< 73 / 210 >

この作品をシェア

pagetop