短編集~The Lovers WITHOUT Love Words~
エレベーターホールの脇に見える、内階段の踊り場。
ほの暗い電気がかろうじて灯るその場所に、誰かがしゃがみこんでいる。
黒くて長いスカート。
光沢を抑えた白地の縁取りのついた、黒くて長いベール。
折りたたんだ膝の中に埋もれていたベールが、恵一の気配に気づき持ち上がった。
中から、恵一のよく知っている顔が出てくると、瞳をパッと輝かせた。
「恵一にぃ!」
滅多なことでは驚かない、恵一の口が開いてふさがらなくなった。
その口から、やっとのことで出てきた言葉は、
「ユキネ・・・?」