911の恋迷路
慎の瞳に光るものがあった。
陵のメールは、その当時の携帯電話で送ることが出来る字数が限られていたため、数回に分けて送られていた。
「慎へ」
件名が慎宛てのそのメールには、テロを目前にした恐ろしい情景が綴られていた。
10年前の9月11日のテロに遭遇したことが、陵の考え方、生き方を変えたのだ。
メールに綴られた陵の想いは、生々しく哀しかった。
また、加えて異母兄弟である慎への慈しみと謝罪、もうひとりの弟への想い、
最後に果歩へのさよならの言葉があった。