911の恋迷路

 家族の絆(きずな)なんて、放っておくと、他人との関係よりも弱いのかもしれない。

 「遠くの親戚よりも近くの他人」

 「何ですか、それ?」


 よくわからない、と浜崎。
 しかも、おじいちゃんは家族と同居で近いじゃん。

 浜崎は自分のことのように、プリプリ怒っている。


 「浜崎」

 「ハイ」

 「じいさんに、入れ込み過ぎんなよ」


 (俺はえらそうに言えるような人間じゃないけど)


 「心配デスカ?」

 ふざけて浜崎が片言(かたこと)で、しゃべってみせる。

 なんだよ、それ。



 「沼田さん、心配ならあたしの彼氏役で、おじいちゃんに会ってみます?」


 (たしかに浜崎のフォロー役だからな)

 「そうだな」

 慎は何となく返事をする。
 気がないな~、と浜崎。



 「あたしは、沼田さんが本当の彼氏だったら、うれしいな」
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