911の恋迷路

 「9.11」のメールはここで切れてしまっている。字数オーバーだったのだろう。


 陵は、テロで避難していた時の思いを書き記しておきたかったのだろう。

 まだテロの時の興奮が伝わってくるメールだ。

 陵はアメリカへ行く飛行機に乗る前に、携帯を見送りにきた慎に渡して行った。


 小学生の慎に「土産と交換でな」と携帯を預けた陵。

 『そういえば、アメリカではケイタイ、使えないんだった。なくすといけないから、あずかっといてくれよ』

 そう言って……、

 笑顔で、陵はアメリカへ発ったのだ。


 

 (陵は携帯を俺に渡したこと、忘れてメールを送ってしまったんだ)

 

 それは次に来た最後のメール、
 「慎へ」で明らかだった。
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