911の恋迷路

 10月2日、日曜午前。

 
 秋晴れの少し肌寒い中、果歩は兄の健の自宅マンションを訪問した。

 健には、ちびっ子が2名いる。


 「かほちゃんだ~」

 シュークリームの箱を受け取りながら、ちびっ子たちは、跳ね回る。


 (また2人とも育ったな)

 この10年で健は結婚し、子ども2人の父親となった。


 こういう当たり前の光景を見ると10年の時間の長さを感じる。

 甥(おい)はアオレンジャーのまねをしてポーズをとる。

 果歩がケイタイで写真を撮ろうとすると「カメラどこ?」とうるさい。

 

 姪(めい)は、シュークリームの箱にかじりついている。


 「果歩ちゃん、いつもすみません」

 「いえ、こちらこそお休みの日に兄を借りてすみません」

 果歩に礼を言って、健の妻は姪から箱を取り上げた。

 

 「なんでもかじるんで困ってます」

 

 成長の証だ。

 姪っ子に小さな歯を見せてもらって、

 果歩はうれしいような淋しいような変な気分になる。
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