911の恋迷路

 茨城への道の悪さは想定外だった。

 3.11の東北太平洋地震のせいで道が陥没したり割れている。

 ブルーシートでおおっている部分や水が染み出た痕もあって、
 傷跡がまだ生々しい。

 

 「このへんも地震ひどかったんだな」

 「……地面、ずいぶん動いたらしいですね」

 健と慎が3.11の地震と津波について話をしている。


 『だれも助けてやくれない』

 陵が9.11のテロに遭遇したときの記録に書いてあった文章を思い出す。



 『国も会社もだれも助けてやくれない』

 

 高速から降りて、田舎道をゆっくり走る。

 ちょっとした割れ目に車輪がはまりでもすれば、進めなくなってしまう。

 


 慎が車を降りて、電柱の町名と番地を見てくる。

 「この辺りだと思います」

 両端に畑が続き、家はまばらだ。空が青くて広い。

 「のどかだな」

 


 健と果歩も降りて空を仰ぐ。

 寝転んでしまいたいくらいの開放感。

 しばらく3人で空を眺めた。秋の空は高くて澄み切っている。


 
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