911の恋迷路
「そろそろ行くか」
健が言って出発した。
このまま本当にピクニックに行きたい気分だ。
「あ、あれだ、酒屋。見覚えありますから」
慎が目印の酒屋を見つける。
古くからある酒屋のようだ。
かすれたような昔の飲料水の広告看板が見えてきた。
酒屋の角を曲がり、徐行すると門の陰からひとりの男性が出てきた。
「沼田稔(みのる)です」
(出迎えに出てきてくれたんだ)
果歩にとって意外な稔の行動だった。