911の恋迷路
果歩は声をかけた。
「……りょうくん…」
不安で待つのを止めようと思いつつも、
この時がくるのを心のどこかで待っていた。
望んでいた。
(よかった、生きていた)
喜びの気持ちと同時に、果歩の心のうちの不安が和らいでいく。
「……お客さん?」
「そう、兄さんと親しかった人が訪ねて来てくれたんだよ」
陵は、にこにこと笑った。無邪気な瞳。
そこには感情の波がない。
果歩のことを見ても分からないようだった。