911の恋迷路
気づくと稔がお茶を人数分入れてテーブルに置いてくれていた。
「おかまいなく…失礼ですが」
健が言いにくそうに口を開いた。
「いつも、こうですか…?」
「ええ」
お茶をテーブルに並べながら、稔は陵に顔を向けた。
「いつも穏やかに過ごしているよね、兄さん」
(もしかしたら、稔さんは心を許した人には、愛情深い人なのかな)
果歩は稔が思いのほか尖った人ではないことに、ほっとした。
だが、すぐに家族と認めた愛する人間のみに向ける態度だったことを思い知らされるのだが……。
「兄さん、兄さんがなくしていた携帯電話を
今日ここまで持ってきてくれたんだよ」
勧められたお茶を飲みながら、陵は稔の言葉に頷く。
「そう……ありがとう…ございます」