911の恋迷路
外の風が冷たくなってきて、胸のなかのせつなさが増す。
「寒いな、窓しめてくれ」
健兄がくしゃみをして、果歩は窓を閉めた。
急いで帰ってきてしまったため、ふたりは昼食をとっていなかった。
「…冷えて来たな、お前、うちでご飯、食べてくか」
果歩は首を振る。
「ううん……今日は帰る」
「そっか、疲れたよな…俺は家族サービスするか」
健は今回の家族の争いを見て、衝撃を受けたのだろう。
「健兄、ありがとね」
「今日はよく休めよ。薬もしっかり飲むんだぞ」
正直にいうと兄貴ぶる健をうざったく思うこともある。
でも今日ばかりは、
果歩は兄の存在に心から感謝していた。