911の恋迷路

 果歩は耳を疑う。

 「でも慎とは逢うな」

 ビールが進む隼人。

 「俺さ、果歩と慎がふたりで逢うなら、慎を殴り殺すかも」

 「飲みすぎだよ」

 果歩は隼人からビールの缶を奪った。


 寄りかかってくる隼人を支える。
 隼人の酒臭い匂いが、果歩には哀しかった。

 (ごめんね…はやと)

 何回、謝っても謝り足らないくらい、
 隼人は果歩を支えてくれた。大事にしてくれた。

 「果歩……目が回る」

 果歩は隼人を引きずっていき、ベッドに寝かした。

 
 そして残りのビールを飲み始める。

 今夜は果歩も酔ってしまいたかった。

< 166 / 232 >

この作品をシェア

pagetop