911の恋迷路

 その息の音が止まぬうちに、沼田は沢森に返事をした。


 「付き合ってないけど、

  浜崎さんなら、付き合ってもいいと思うよ」


 (なら……付き合っても? も?)

 


 些細な事と言うなかれ。

 女子にとっては重要なポイントなのだ。



 浜崎の心の琴線に大きな衝撃が走る。

  「『浜崎なら』なんて、失礼です!」

 沼田に笑いながら可愛く食ってかかる。


 表情には出さないが、
 大人といえども、浜崎の腹の内は煮えくり返りそうだ。


 「好きな人、ほかにいるから、そういう言い方できるんでしょ?」

 (ちょっと意地悪な質問)

 

 浜崎も我ながら、

 棘のある言い方をしてしまった、と反省する。


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