911の恋迷路
(あああ、駄目かも、あたしって、おばか)
コーヒーもう一杯、飲んじゃえ、と席を立った瞬間。
「そうなんだよね……好きな人に彼氏がいてさ」
見事に言い返されてしまった。
(本当に好きな人がいたんだ)
なぜ、先日告白したときに、言ってくれなかったんだろう。
コーヒーを淹れて席に戻って、浜崎は深呼吸をした。
涙がじわっと出てくるのを我慢するためだ。
「好きな人に最近付き合い始めた彼氏がいるから……、
そういう場合、仕方ないだろ」
慎の投げやりな言葉に止めようとした涙が、
また湧いてくる。
(仕方なくて、
仕方なくてあたしと
付き合ってもいいなんて)
酷い……。