911の恋迷路

 「不幸が続いたわけか、やりきれないな」

 「残念ながら、本人は今、どう感じて生きているのかは分からないんだ」

 浜崎と沢森は黙ってしまう。


 

 少しばかり、さすがの沢森も考えているようだったが、口を開く。


 「兄貴の事と沼田自身の事は切り離して考えろ。
  そうしないとお前、幸せなんていつまでたっても来ないぞ」

 
 沼田は沢森の言葉には答えなかった。
 沼田の想いの向こう側に何が待っているのか、

 それは浜崎にも分からない。

 
 けれども……、


 (沼田さんはその彼女に告白して破れないと、
  
  あたしの気持ちを決して振り返ってはくれないんだ)

 切ない。

 やりきれない。やってられない!

 
 
 浜崎は、残りのコーヒーをぐっと飲み干した。
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