911の恋迷路
その時、果歩の携帯が鳴った。
メール受信の音だ。
単調なベルの音に反応して受信メールの確認をする。
稔からのメールだ。
『すみません、出るのが遅くなりました。20分ほど遅れます』
慎が果歩の携帯を見て呟く。
「遅れるんですか?」
「うん、20分くらい遅れるみたい」
「花井さん、メールの着信音変えたんですね」
果歩と慎の目が合った。
「うん、そう」
頷いて、また窓から見える単調な景色に見入る。
沢山の人、ひと、ヒト。どこから湧いてくるのか、
人の数は増える一方だ。
「僕とふたりで居るの、気まずいですか?」