911の恋迷路

 その時、果歩の携帯が鳴った。


 メール受信の音だ。

 単調なベルの音に反応して受信メールの確認をする。

 稔からのメールだ。


 『すみません、出るのが遅くなりました。20分ほど遅れます』

 
 慎が果歩の携帯を見て呟く。

 「遅れるんですか?」

 「うん、20分くらい遅れるみたい」

 「花井さん、メールの着信音変えたんですね」

 
 果歩と慎の目が合った。

 「うん、そう」

 頷いて、また窓から見える単調な景色に見入る。

 沢山の人、ひと、ヒト。どこから湧いてくるのか、

 人の数は増える一方だ。

 
 

 「僕とふたりで居るの、気まずいですか?」
< 196 / 232 >

この作品をシェア

pagetop