911の恋迷路

 稔は首を振り、自らも頭を下げた。

 「そういう事とは知らなかったんです」

 少し皮肉のように感じられる口調。
 
 ふたりの繋いだ手から目が離せないようだ。

 

 「さっき、稔さんを待って居る間に、そういう事になりました」

 

 「それは……」

 

 目を見張る稔。

 稔の目が一転して面白そうに、興味深そうに瞬いた。

 「どこか店に入って、食べながら話しますか」

 夜が更けてくると立っているだけでも寒い。

 
 果歩と慎、稔は揃って雑踏の中を歩き始めた。
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