911の恋迷路
困惑<果歩視点>
「出ようか」
大笑いしてしまったこともあり、慎と果歩は店を出る。夕暮れどきだ。
慎が携帯を取り出す。
スマートフォンだ。
「社に戻らないと」
黒いスマホで慎は電車の時刻を確認する。
「花井さんはどうしますか」
(花井さんか~)
果歩は何だかくすぐったい。かゆくなってくる。
「花井さん?」
覗き込む慎の瞳。
(もう少しいたいな)
どうしてだろう……。
あれ?
果歩は慎の瞳から逃げたくなる。
慎から目をそらして、果歩はさっさと歩きだした。