911の恋迷路
「あたし、ちょっと出てきます」
亜美はデスクの引き出しから読破した小説を取り出した。
時代物の小説を羽津から借りていて、近日中に返す予定だった。
(本当はお嫁さんに返すべきなんだろな)
仕事人として失格かもしれないが
亜美は羽津の嫁に返すつもりはなかった。
1~3巻まで1冊ずつ借りて、楽しく読み進めていた小説。
もう、羽津からその楽しみを渡される事は決してない。
「春夫ちゃん」
沢森と亜美しかいないオフィス。亜美は沢森に呼びかける。
「あ?」
(今度は春夫ちゃんったら、耳掻きかい)
呆れながらも依頼する。
「電話番お願い」