911の恋迷路
「気分でも悪いんですか」
亜美は思い切って話しかけてみる。
組んだ腕から起き上がった顔は、思いのほか整った顔だった。
(顔は悪くないじゃない)
でも亜美を見ようともしない。
「いいえ」
無愛想に答えて立ち上がる。
その頬が火照っているのに気づいた。
(泣いてたのかな?)
目をこすり、男性が立ち上がる。
これ幸いとベンチを独り占めする亜美の目に、
男性の姿は非常に力なく見えた。
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