911の恋迷路

 「気分でも悪いんですか」

 亜美は思い切って話しかけてみる。

組んだ腕から起き上がった顔は、思いのほか整った顔だった。

 

(顔は悪くないじゃない)

 でも亜美を見ようともしない。

 「いいえ」

 無愛想に答えて立ち上がる。


その頬が火照っているのに気づいた。

 (泣いてたのかな?)

 目をこすり、男性が立ち上がる。


これ幸いとベンチを独り占めする亜美の目に、


男性の姿は非常に力なく見えた。
< 223 / 232 >

この作品をシェア

pagetop