911の恋迷路
 
 「こうやって皆で時間を過ごせて幸せなんです」

 それでいいじゃないですか。

 

 難しい気持ちの整理や相続や恨みや妬み、
 それを持っていてもいいけど、

 考えない時間を共に僅かであっても持てるなら、

 果歩も稔も慎も、陵も、

 

 いつか迷路を抜けて出口に出る。

 

 「迷路の出口を出た時に、最初に何が見えてくるか、

  楽しみなんです」


 言葉にしてみて

 果歩の胸の中から、じわりと湧き上がったものがある。

 


 (よく、ここまで来たな)

 
 再び誰かを熱く想うようになるなんて。

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